2014.01.07 Tuesday
低温やけど(MOM[モム]掲載記事)

住吉皮膚科で受けた取材の記事が、先日(1月1日)発行の雑誌 MOM[モム]に掲載されましたので、その内容を紹介いたします。
“エコ暖房として人気の湯たんぽにご用心。
肌に長時間密着させると
「低温やけど」の危険性が”
今人気の湯たんぽで低温やけどが急増中。
寒さが厳しい冬に欠かせない暖房グッズといえば、湯たんぽ、使い捨てカイロ、電気あんか、電気毛布、電気こたつなどなど。
特にここ数年は、省エネ意識の高まりから湯たんぽがちょっとしたブームです。
熱すぎず、じっくり長く温めてくれて重宝しますが、人気の高まりとともに、湯たんぽで「低温やけど」を負う人が増えています。
使い捨てカイロや電気毛布なども、使い方を誤れば低温やけどになる恐れがあります。
やけどというと、熱湯や火など高温の熱によって皮膚や粘膜が損傷することだと思いがちです。
しかし、45℃前後の心地良い温かさでも、長時間その熱源が直接皮膚に触れていると、皮膚に深いダメージを与えることがあるのです。
これが「低温やけど」と呼ばれる症状です。
ある実験結果によると、50℃で約3分間、44℃で6時間以上密着して皮膚を圧迫する状態が続くと、皮膚の細胞がダメージを受けることがわかっています。
通常、皮膚の表面から伝わった熱は、血液を介して身体中を巡ります。
しかし、使い捨てカイロや湯たんぽなどの熱源が皮膚を圧迫する状態が続くと、血管も押しつけられてしまうので、熱の逃げ場がなくなってしまいます。
その結果、熱は時間をかけてじわじわと皮膚の深部にまで伝わり、ダメージを与えていくのです。
低温やけどは、やけど特有の痛みを伴わず気づかないうちに進行することが多く、それだけに重症化してしまうケースが多いので注意が必要です。
見た目は軽傷なのに
実は重症の低温やけど。
高温のやけどは、表面のダメージが最も激しく、内部にいくほど軽くなっていきます。
それに比べ低温やけどは、見た目には軽症の状態でも、皮膚の内部はそれ以上に重症となっている場合が多いのが特徴です。
皮膚の表面が少し赤くなった程度で、あまり痛みを感じなくても、内部の細胞組織の一部がダメージを受けていることもあります。
そうなってしまうと治るまでに時間がかかる上、やけどの痕が残ってしまうケースも少なくありません。
また、重症であればあるほど、感染症を引き起こす危険性が高く、冷やすだけでは回復しません。
感染症予防のためにも、自己判断に頼ることなく、必ず早めに医療機関を受診してください。

POINT!
一般に、44℃では約6時間の接触で発症し、46℃では30分〜1時間、50℃では2〜3分で「低温やけど」を発症します。
“湯たんぽに体の一部を強く押しつけるのはNG。
暖房グッズは正しい使い方で安全・快適に”
湯たんぽに直接触れて密着させないよう注意。
湯たんぽを使用した低温やけどで病院を受診する人が増え始めたのは、4〜5年ほど前から。
すねに赤いものができたと訴える人を診察してみると、皮膚内部の深いところまでやけどを起こしていた、というケースも珍しくありません。
昔ながらの湯たんぽは、銅やブリキといった金属製で、タオルで何重にも包まないと、とても熱くて触れないものでした。
しかし最近は、プラスチック製のものや、ゲル状の保温剤を電子レンジで温めて使用するタイプが増えています。
こうした湯たんぽは、直接触れてもそれほど熱さを感じないため、温かさを求めるあまり、直接肌に密着させて使ってしまうようです。
これは気づかないうちに低温やけどを負ってしまう危険な行為なのです。
また、床暖房でも床と肌が密着した状態が長時間続くと、低温やけどになることがあります。
高齢者、女性、子どもの低温やけどには特に注意。
とりわけ低温やけどで受診されることが多いのが、65歳以上の高齢者です。
自分で寝返りを打てない高齢者の低温やけどは、数カ月も治らない重症の潰瘍(かいよう)になってしまう場合があります。
こうした人には熱源の場所を時々変えるなど、周囲の心配りが必要です。
もちろん小さい子どもが湯たんぽを使う場合にも、肌に直接触れないよう配慮してください。
また、男性に比べると女性患者が多く、やけどを起こす部位は下半身が多いのも、低温やけどの特徴です。
かかとやくるぶし、すねなど、皮膚のすぐ下に骨がある部位に湯たんぽなどが押しつけられていると、毛細血管が圧迫されて血流が悪くなりやすいのです。
やけどになると予想もしていなかった低い温度でも、長時間熱源に触れていることで知らぬ間になってしまうのが、低温やけどの怖さです。
暖房グッズを正しく上手に使って、快適で暖かな冬を過ごしてください。

POINT!
住吉孝二さんからひと言
例えば強火でサッと肉を焼くと表面だけが焦げますが、弱火でじっくり焼くと内部まで火が通ります。
低温やけどの恐ろしさは、このように内部まで熱が伝わってしまうことです。
重症化すると治療に時間がかかりますので注意しましょう。
