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アトピーの新薬「デルゴシチニブ軟膏」について



2020年6月24日から、アトピー性皮膚炎の新しい外用治療薬「デルゴシチニブ軟膏」(商品名:コレクチム軟膏)が処方できるようになりました。

約20年前に「タクロリムス軟膏」(商品名:プロトピック軟膏)が登場し、ステロイド外用薬が中心であったアトピー性皮膚炎の治療が大きく変わりましたが、それ以来の新しい外用薬ということになります。


デルゴシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、JAKファミリーの全てのキナーゼ(JAK1、JAK2、JAK3、TYK2)を阻害し、免疫細胞の活性化を抑えます。

JAK阻害薬は、内服薬としては、すでに関節リウマチ潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されていますが、外用薬として使用されたことはありませんでした。

デルゴシチニブ軟膏」は、2020年1月に世界に先駆けて日本で承認された、アトピー性皮膚炎の治療薬ということになります。


以下に、タクロリムス軟膏との違いを含めた利点・欠点について説明いたします。

使用方法はタクロリムス軟膏とほぼ同じで、1回最大5gまで、12時間程度あけて1日最大10gまで使用できます。

タクロリムス軟膏は、顔から首におけるアトピー性皮膚炎スタンダードな治療薬として定着していますが、初めて使用した約80%(小児用では約50%)の人に1週間程度の刺激感(ヒリヒリ感や灼熱感)を伴うという欠点がありました。

ところが、今回登場した「デルゴシチニブ軟膏」には、このような刺激感が無いため、今までタクロリムス軟膏の使用を断念しステロイド外用薬のみに頼っていた人でも、スムーズに使用できるかも知れません。


また、デルゴシチニブは分子量が310と小さいため、分子量が822と大きかったタクロリムス水和物と異なり、皮膚への透過性が高いと考えられます。

そのため、タクロリムス軟膏では顔にしか効果の実感がなかった人でも、今回の「デルゴシチニブ軟膏」であれば、腕や体などでも効果の実感が得られる可能性があります。


ただし、すでに内服薬で使用されているJAK阻害薬では、悪性腫瘍の発現が報告されているため、1日に10gまでという使用量の制限をしっかり守る必要があります。

また、タクロリムス軟膏と同様に、びらん面や粘膜への使用、リント布に亜鉛華軟膏といった古典的外用薬の貼付、密封療法は経皮吸収が強まる可能性があるため行ってはいけません。

なお、同一部位へのタクロリムス軟膏との併用や、シクロスポリン(商品名:ネオーラル)やデュピルマブ(商品名:デュピクセント)といった全身療法との併用は、使用経験が無く安全性が確認できていないため、避けておくべきであると考えられます。

16歳未満の小児や、妊娠中あるいは授乳中の方も、安全性が確認できるまではデルゴシチニブ軟膏の使用を避けるようにすべきでしょう。


アトピー性皮膚炎に対しては、現在も様々な薬剤の研究・開発が進んでおり、今後さらに治療の選択肢が増えていくものと考えられます。


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「いぼ」って何?



いぼ」と言えば、皮膚の表面に生じた突起物をイメージすると思います。

皮膚科的には、これらの「いぼ」のことを「疣贅(ゆうぜい)」と呼んでいます。

実際には具体的な病名がたくさんありますが、大きく分けると「ウイルス性の疣贅」と「加齢に伴う疣贅」に分類されます。


<ウイルス性疣贅>

ウイルス性疣贅」の大部分は、パピローマウイルス(HPV)の感染によって生じます。
その中で、最も一般的な疣贅は「尋常性疣贅(じんじょうせい ゆうぜい)」です。
典型的な尋常性疣贅は、表面がザラザラとした小結節で、疣贅の表面近くまで入り込んだ血管が黒い点々として見える場合があります。
足の裏手の指先などに生じることが多く、小児ではウオノメができたと勘違いするケースが非常に多く見受けられます。


扁平疣贅(へんぺい ゆうぜい)」あるいは「青年性疣贅(せいねんせい ゆうぜい)」も、パピローマウイルスの感染によって生じます。
成人から手の甲にかけて、隆起の少ない小さな疣贅が多発します。


尖圭コンジローマ(せんけい こんじろーま)」もパピローマウイルスの感染ですが、通常は性感染症の一種として生じます。
外陰部肛門周囲に、丘疹状の疣贅が多発し、徐々にカリフラワー状に拡大する場合もあります。


パピローマウイルス以外のウイルス性疣贅には、「伝染性軟属腫(でんせんせい なんぞくしゅ)」があります。
いわゆる「みずいぼ」のことです。
ほとんどが小児に生じますが、アトピー性皮膚炎などで乾燥肌があると、肘の内側膝の裏にも生じやすくなります。
プールの水で感染することはありませんが、肌が接触することによって感染する可能性があるため、プール管理者の指示によって治療をすすめられる場合があります。
特に指示が無ければ放置しても構いませんが、治るまでに半年から数年かかります。
典型的な新しい伝染性軟属腫は、1〜3mm程度で表面に光沢があり、半球状の白い疣贅の中央に凹みがあります。
このような新しい疣贅が増えている場合には、早めに治療を受ける方が良いでしょう。


<加齢に伴う疣贅>

一方、ウイルス感染と関係のない疣贅には「軟性線維腫(なんせい せんいしゅ)」があります。
正常な皮膚と同じ色の、有茎性でとても柔らかい疣贅です。
小さなものは、首周り腋の下に増えてきて気付くことが多いようです。


同じく、加齢とともに増えてくる「老人性疣贅(ろうじんせい ゆうぜい)」もウイルス感染とは関係がありません。
20歳くらいから生じる場合もあるため、老人性疣贅という病名は必ずしも適切ではなく、皮膚科的には「脂漏性角化症(しろうせい かくかしょう)」という病名を用いています。
褐色調の結節として生じていることが多く、痒みを自覚する場合もあります。


<治療>

以上のように様々な種類の疣贅がありますが、どれも保険診療で治療を行うことが可能です。

しかし、ウイルス性疣贅に対しては特効薬というものが存在しないため、様々な治療が行われています。

多くの疣贅では、液体窒素(−196℃)を用いた冷凍凝固法が行われていますが、外科的な切除摘除塗り薬での治療、ヨクイニン内服など、疣贅の種類や症状に応じて治療法が選択されます。


上の写真は、徳島県・鳴門海峡で撮影した渦潮の様子です。
(撮影:住吉孝二)


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繰り返すヘルペスに新しい治療(PIT)



ヘルペスは、ウイルス感染により発症する病気です。

同じウイルス感染の風邪と比べると感染力はかなり強く、一度でも感染すると体の内部に入り込み、何度も繰り返して発症する特徴を持っています。

ヘルペスウイルスの種類により発症する場所も異なり、唇や口のまわりに発症している場合は、口唇ヘルペスと診断されます。

疲れていたり、体の抵抗力が弱くなっていると、神経に潜んでいるウイルスが活動し始めることで症状が再発してしまいます。

口唇やその周辺にピリピリ、ムズムズといった違和感が出てきたら、ウイルスが活動しているサインです。


ヘルペスの治療は、飲み薬を使用するのが一般的です。

飲み薬抗ウイルス薬)は、神経でのウイルスの活動を抑える働きがあります。

そのため、違和感が出てきた早い段階で飲み薬の治療を始めると、症状の出現を抑制することができる訳です。


従来の治療薬は、ヘルペスの症状が出てからでないと薬の処方ができませんでした。

しかし今年から、あらかじめ処方された薬剤を初期症状に基づき患者さんの判断で服用開始する治療法PIT:Patient Initiated Therapy)が登場しました。


この治療法(PIT)は、年に3回以上再発している単純ヘルペス口唇ヘルペス性器ヘルペス)に対して、ヘルペスの初期症状に気づいてすぐに、飲み薬を1日だけ飲む1 day treatment)だけで終了します。

具体的には、あらかじめ処方されたファムビル錠4錠服用し、12時間後に再び4錠服用して終了です。

ただし、違和感が出てきた早い段階6時間以内で治療を開始する必要があるため、ヘルペスの初期症状(患部のムズムズ、ピリピリとした違和感)が判断できない患者さんには薬を処方することができません。


再発性ヘルペスでお悩みの方は、どの治療法が適切か、皮膚科専門医に相談してみてください。


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| 院長ブログ | 15:46 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
いぼ(尋常性疣贅)の治療期間は?



当院では、いぼ(尋常性疣贅)の治療として、液体窒素を用いた凍結療法を行っています。

「だいたい何回くらいで治りますか?」という質問を受けることがありますが、これは治療を始めてみないと分かりません。

尋常性疣贅ウイルス感染症であるため、治療中に増大あるいは拡大してしまう場合もあり、部位や大きさによっては剥がれにくい場合もあるからです。


そこで、最近当院を受診された尋常性疣贅の患者さん(100人以上)の治療経過を見直してみました。

今回集計したのは、手の指先あるいは足の裏に生じた尋常性疣贅のみです。

治療方法は、液体窒素(−196℃)を用いた冷凍凝固法で、1〜2週間ごとに通院していただいています。

治療開始から治癒に至るまでの期間は、以下のような結果でした。

1ヶ月以内:10%
2ヶ月以内:54%
3ヶ月以内:73%
     :
6ヶ月以内:83%
     :
     :
12ヶ月以内:96%



液体窒素による治療開始から2ヶ月以内半数以上の患者さんが治癒に至っており、3ヶ月以内7割以上の患者さんが治癒していることが分かります。

その後は徐々に治癒率が低下しますが、96%は1年以内に治癒しています。

つまり、多くの患者さん2〜3ヶ月以内に治癒しますが、治癒に至るまで半年から1年近くかかる患者さんもおり、少数ですが1年以上の治療期間を要する患者さんもいらっしゃるというのが実状です。


また、必ず治ると信じて、前向きに治療に取り組むことも大切です。

なかなか治らないと悲しんでいるよりも、笑顔で過ごした方がウイルスに対する免疫細胞が活性化されることが、医学的にも証明されているからです。


上の写真は、岐阜県で撮影したギフチョウです。
(撮影:住吉孝二)


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| 院長ブログ | 11:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
低温やけどについて知りたい【ゆたか冬号掲載記事】

の執筆記事が、年金と暮らしの快適情報誌ゆたか冬号(p13)に掲載されましたので、その内容を紹介いたします。



《季節のやまい診察室》

(相談)低温やけどについて知りたい

 冬に高齢者のやけどが多いと聞きました。
 どういったことに注意すればよいですか?(77歳・女性)


(回答)熱くない温度でも低温やけどに注意

 住吉皮膚科(東京都)院長・順天堂大学皮膚科非常勤講師 住吉 孝二

やけどは、熱いと感じてすぐに冷やすことができれば、軽い症状ですみます。
しかし、接触する熱源の温度が高い、あるいはそれほど高くなくても接触している時間が長いと、皮膚の内部にまで熱のダメージが伝わるため、赤くなったり、水ぶくれになったりします。
高齢者では、熱さを感じる感覚が鈍くなり、皮膚も薄くなるため、熱が内部にまで伝わりやすく、注意が必要です。

「低温やけど」とは、心地よいと感じる44〜50度程度の温度のものに、肌が長時間接触していたためにおこるやけどです。
省エネ志向で湯たんぽの使用がふえてきたことなどから、低温やけどが注目されるようになりました。
低温やけどは、皮膚の表面が赤い程度でひどく見えなくても、長時間熱源に接していたために、内部深くまで大きなダメージを負い、重症になっている場合があります。
皮膚の表面から入った熱は通常、血液の循環で全身に分散されます。
しかし、皮膚が熱源に圧迫されて血流が悪くなり、熱の逃げ場が少ないとやけどになります。
そのため、低温やけどをおこしやすいのは、皮膚のすぐ下に骨があって、熱の逃げ場が少ない、脚のすねや足首などです。



昔ながらの金属製の湯たんぽは、タオルで巻かないと熱くて触れませんでした。
しかし、最近のプラスチック製の湯たんぽは、表面がそれほど熱くなりません。
うっかり長い時間肌に直接触れてしまうと、低温やけどの原因になってしまいます。
湯たんぽは、専用の袋に入れるかタオルなどを巻いて、当てる位置を変えながら使用してください。
寝るときの寒さ対策では、事前に湯たんぽを布団に入れて温め、就寝中は肌に接触しない場所に移動させておくと安心です。

使い捨てカイロも注意が必要です。
背中や腰など皮下脂肪が少ない場所に長い時間当てていると、やけどをおこす場合があります。
貼るタイプのカイロは衣類の上から貼り、上から圧迫しないように注意してください。

湯たんぽ、カイロなどの使い方
長時間、同じ部位に触れないようにする。
湯たんぽは専用袋かタオルなどで包む。
貼るカイロは衣類の上に貼り、圧迫しない。
電気あんか・毛布は寝る前に電源を切る。


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