2023.02.28 Tuesday
多汗症(わき汗、手汗など)
汗は、毛孔からではなく、エクリン汗腺と呼ばれる汗の腺から排出されます。
発汗は、主に体温調節のために行われていますが、皮膚表面の湿度を保ったり、細菌やウイルスから皮膚を守る働きもあると言われています。
「多汗症」とは、日常生活に影響を及ぼすほど、エクリン汗腺から大量に発汗する状態を意味します。
多汗症には、全身の発汗が増加する「全身性多汗症」と、手掌(手の平)や腋窩(わきの下)といった特定の部位のみの発汗が増加する「局所性多汗症」があります。
全身性多汗症には、原因の分からない「原発性」と、甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫といった内分泌疾患などに合併して生じる「続発性」があり、局所性多汗症にも、原因が分からない「原発性」と、外傷などで副交感神経が損傷を受けて生じる「続発性」があります。
全身性多汗症に対しては、内服薬(抗コリン薬)での治療が行われます。
局所性多汗症に対しては、部位や症状に応じて、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素製剤の注射、交感神経ブロックなどが行われており、最近では外用薬の開発も進んでいます。
いわゆる「わき汗」は、他の部位と同様に温熱刺激に対して生じる発汗です。
つまり、暑いと感じた時に発汗するのですが、腋窩(わきの下)は他の部位よりも発汗開始の閾値が低くなっています。
そのため、それほど暑いと感じていなくても発汗が始まります。
なぜなら、腋窩には太い血管があり、発汗によって体温を下げるのに効率が良いからです。
しかし、腋窩多汗症は、腕にふさがれて蒸発しにくい場合があるため不快に感じやすく、発汗量が多いと見た目にも気になります。
このような「原発性腋窩多汗症」に対しては、2020年11月から外用薬(ソフピロニウム臭化物)が保険適応となっているため、医療機関で治療を行うことができます。
2022年5月からは、シート状の外用薬も保険適応に追加されています。
いわゆる「手汗」は、他の部位とは異なり、不安や緊張などの精神的な刺激によって生じる発汗です。
つまり、暑いと感じて発汗することはなく、睡眠中も発汗が止まります。
ところが、精神的な負荷が少ないのに、手に大量の発汗が継続する病態があります。
このような手掌多汗症は、家族にも同様の症状がみられることが多く、遺伝的な要因もあると考えられています。
「原発性手掌多汗症」に対する外用薬の開発も進んでおり、腋窩多汗症(わき汗)だけでなく、手掌多汗症(手汗)に対して外用薬による保険診療が可能になる日も遠くなさそうです。
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